こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。自粛警察とかデマ流すヤツとかを批判したい気持ちはやまやまでしょうが、ああいうのが出てくるのも無理はないんです。なぜなら、感染の経緯に関する正しい情報が何も公表されてないから。
感染に関する情報で公表されてるのは県ごとの人数だけじゃないですか。それしか判断材料がないから、県ごとの感染者数を競って一喜一憂するようなバカらしいことになるし、あげくには、うちの県にウイルスを持ち込むな! と県外ナンバーのクルマを破壊するような蛮行に発展するんです。
正しい情報がない場合、ひとは勝手に正誤や善悪を判断してしまいます。自分の狭い経験と知識だけから導いた偏見を、正解とカン違いしてしまいがち。
私だけでなく、たぶん多くのみなさんが知りたいのは、感染の経緯なんですよ。人数ではなくて。これだけ多くの症例が出たんですから、どういう状況で感染したのかという情報が、患者の聞き取り調査からある程度わかってるはず。それなのに、厚労省とかから、情報がまったく出てこない。
一番危惧されてたのは通勤電車での集団感染です。とりわけ日本は通勤時間が長いことで有名な国ですから、密閉空間である電車に小一時間乗らなきゃいけないひともざらにいます。そりゃコワいでしょう。
でも結局、電車での集団感染が起きたという話はありませんでした。だからといって、材料もなしに電車は安全だ、とはいえません。だから私は、感染者のなかで通勤電車を利用してたひとがどれだけいたのか、電車での感染が疑われた例はどれだけあったのか、あったとして、乗車時間との関連はあったのか、そういうデータを知りたいんです。
電車での集団感染が起きなかったのはなぜなのか、マスクとか窓開けとか、どの対策が有効だったのか、そのへんを科学的に解明しないかぎり、次の対策につながりません。効果がある対策とない対策を見極めないと、精神論やおまじないばかりが横行し、科学を押しのけてしまいます。
効果がない対策の代表例が、防災無線による外出自粛の呼びかけです。いまどき、テレビもラジオもネットもなく、防災無線だけで情報を得てるひとなんてどこにいるんですか。
毎日何度も防災無線で、不要不急の外出を避けましょう、って繰り返してるけど、まともなひとなら一度聞けばわかるのだから無意味です。まともじゃないひとは何度聞いても従わないのだから無意味です。
不要不急の外出を避けましょう、と防災無線が鳴り響く下で、パチンコ屋の開店待ちの行列ができてる光景が、その無意味さを物語っています。
パチンコも電車と同様に、密閉空間に多くのひとが長時間滞留するのだから、危険度が高いと思われてました。ですから論理的な可能性を危惧して休業要請をしたのは、必ずしも間違いではありません。
でも、パチンコ屋に並んでるひとを批判したとして、「パチンコ屋で集団感染は起きてねえじゃねえか」と反論されたら、あなたは再反論できますか? できないでしょ。それは反論に必要な情報、材料がないからです。なぜパチンコ屋で集団感染が起きなかったのか、そこにはなんらかの科学的理由があるはずなんだから解明しなきゃいけません。
ネットカフェもです。あれも危険そうだからと自粛要請が出たけど、営業を続けるところもあって、一部で批判もされてました。でも集団感染は起きませんでした。あれこそ、その理由をきちんと解明すれば、今後、自然災害と感染症流行が重なった場合の、避難所での安全な宿泊対策につながるはずです。
一方で、スポーツジムのように、健康イメージをウリにしていて、これまでノーマークだった施設で集団感染が出たのが意外でした。やはりイメージだけでリスクを判定してはいけないんです。
前から何度もいってるように、安全は科学なんです。気持ちやおまじないで安全にすることはできません。どの対策がどれだけ有効なのかを科学的に検証し、何をどう自粛するのがもっとも効果的なのか、その根拠と方法をあきらかにしなければいけません。
人間は理由もなく強制されることに耐えられないんです。ただただガマンしろ、みたいな精神論的自粛勧告は長続きしませんし、同じことを繰り返すと、無視するひとが増えてうまくいかなくなります。
[ 2020/05/19 13:46 ]
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