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レジ袋有料化の本当の理由

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。私はこれまで一貫して、「それは根拠のある事実なのか」を追求してきました。その姿勢は『反社会学講座』以来ずっと変わってません。社会現象や文化と呼ばれるものが事実であるかどうかは、統計と歴史でしか確認できません。だから私はしつこく統計や歴史にこだわるのです。
 信じる信じない、などという愚か者のたわごとは、どうでもいい。重要なのは事実かどうか、それだけです。フェイクを信じてもそれが事実に変わることはないし、事実を信じなければ事実でなくなるわけでもない。
 フェイクを信じるのは個人の勝手ですが、フェイクで他人を批判・攻撃する行為は許されません。
 『反社会学講座』で最初に取りあげたのは少年犯罪のウソでした。「少年犯罪は増えている」というフェイクで少年法の罰則強化や道徳教育の強制に世論を誘導しようとする連中を許せなかったんです。
 私が最近レジ袋のことを話題にしてるのも、まったく同じ理屈です。レジ袋をタダでもらいたいというケチな欲望を正当化するために、フェイクを並べて他人を攻撃してる連中に腹が立つのです。

 レジ袋について改めて文献調査もしてみると、興味深い事実がたくさんわかってきました。
 レジ袋を辞退した客へポイント還元や現金値引きするサービスは10年くらい前にはじまったと思ってたのは私のカン違いで、早いところでは1990年ごろからやっていたようです。
 それはスーパーがエコに目覚めたから? そうではありません。理由はもっと現実的。レジ袋の値段が上がったからです。

 アラフィフ世代なら、レジ袋が普及する前に紙袋が使われていたことをギリギリおぼえているでしょう。アラフォー世代が物心ついたときには、ほぼレジ袋に切り替わっていたかもしれません。
 1970年代末から、紙袋が一斉にレジ袋に取って代わられます。以前は破けやすかったレジ袋の品質が向上したのと、大量生産で紙袋よりも安くなったのが理由でした。
 いまレジ袋のメーカーが、死活問題だ、とレジ袋有料化に反対してますが、70年代末には、同じことを紙袋業界が訴えてた事実は忘れられてます。年間200億枚ともいわれた市場を、根こそぎレジ袋業界に持っていかれたんです。紙袋業界には死活問題でした。
 紙袋業界は「紙は公害が出ない」「地球をキレイにする」などと、エコを強調してレジ袋への反撃を開始したことが、78年10月28日付の朝日新聞で報じられてます。ダイエーはポリエチレン袋と紙袋を両方用意して客に選択をまかせることにしましたが、結果はみなさんご存じのとおり。
 因果がめぐるとは、このことでしょうか。40年前に紙袋業界を窮地に追い込んだレジ袋業界が、今度は窮地に追い込まれているのです。

 そのレジ袋が、原材料の価格高騰を理由に、1988年ごろから値上がりしたのです。これで、レジ袋は石油の余り物で作るってのがウソだとわかりますね。余ってる原材料が高騰するはずがありません。
 安いから、それまで無料で客に提供できたのに、値段が上がれば、確実にスーパーの収益に響きます。とりわけ、安さで他店と競合してる店にとっては、消費税導入とのダブルパンチは深刻でした。そこで、経費削減のためにはじめたのが、レジ袋辞退者へのポイントサービスや有料化だったのです。
 1989年に、いち早くレジ袋有料化を断行したのがスーパーチェーンのオーケーでした。92年2月号の『暮しの手帖』によると、有料化によってレジ袋使用枚数を7割近く削減できたとのこと。それで客離れが起きることもなく、大多数の客が袋を持参していました。レジ袋が有料になっても品物が安く買えるほうがいいと考える客を取り込むのに成功したようです。

 レジ袋有料化に反対するひとたちは、レジ袋削減はエコじゃない、と批判しますが、エコかエコじゃないかはどうでもよかったんです。レジ袋の価格が上がったことが有料化のきっかけだったので、レジ袋の価格が大幅に下がらないかぎり、レジ袋が無料に戻る可能性は、ほぼないでしょう。
[ 2020/09/06 20:25 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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