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今年、コロナ禍で困ったこと

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。これまで何度も書いてますけども、私は片方の耳がほとんど聞こえません。私の正体が○○さんとか推理してる迷探偵をネットでときどき見かけますけど、その○○さんも片耳が難聴なのですか? そこを確認すれば、私とは別人だとわかりそうなものですが。まさか、私が難聴のフリをしてるとでも?

 片方だけ聞こえなくなっても、聴力が半分になるわけではありません。両耳とも聞こえてたときの7割ぐらいは聞こえてると思います。ただし、それは周囲が静かな場合に限られます。周囲に雑音があると途端に聞こえづらくなるから不便です。
 カクテルパーティー効果というのをご存じのかたも多いでしょう。パーティー会場のような周囲がざわついてる場所でも、目の前のひとの言葉だけを聞き取って会話ができる能力のことで、健常者はほとんど全員が無意識にやってます。でも自分でもビックリしたのですが、片耳だけしか聞こえなくなると、この能力が失われてしまうんですよ。目の前の会話相手が小声でしゃべっていて、となりの関係ない他人が大声でしゃべってると、となりの大声に目の前の小声がかき消されてしまいます。不要な音をミュートできないんです。

 たぶんみなさんは一度も意識したことないだろうけど、スーパーやコンビニの店内って、けっこう騒がしい。客の話し声や店内のBGMなど、雑音がたくさんあるんですが、みなさんは無意識にそういう騒音を脳の中でミュートしてるから気にならないんです。
 困るのは会計のとき。そういう周囲の騒音がジャマをして、目の前の店員の言葉が聞き取れないことがよくあります。いちいち聞き返すのも面倒だから、ポイントカードお持ちですか、とか聞いてるんだろうなと予測して適当に受け答えしています。
 今年はコロナ対策で、店員がマスクをして、客との間にはビニールシートみたいなのが吊されるようになったので、いままで以上に聞き取るのがむずかしくなりました。

 レジ袋の質問に適当に答えてると、罠にはまることがあります。経験上、大多数の店員は「レジ袋は必要ですか?」と聞いてくるんで、よく聞きとれなくても、レジ袋の質問だなと思ったら「いいえ」と答えます。
 ところがたまに、「袋はお持ちですか?」と変化球投げてくる店員がいるんですよ。いつもの調子で「いいえ」と適当に答えてしまうと、袋を持参していないことになり、レジ袋をカゴに入れられてしまいます。そこであわてて「レジ袋、要らないです」と訂正するはめに。

 数日前に新宿の紀伊國屋書店に行きました。あそこはいまどき珍しく、エレベーターガールがいるんです。で、私がエレベーターに乗ろうとしたら、ガールがなにか私にいってるんですけど、聞こえない耳の側から話しかけられたからわからない。
 なんだろう? エレベーター内を見るとすでにそこそこ乗客がいたので、満員だから次のにしろといってるのかと予測して、ドアの前で立ち止まりました。これでよろしい? とガールの顔をうかがうと、「リュックを降ろしてください」といわれました。
 あ、混んでてジャマになるからってことね。これはさすがに予測できませんでした。
[ 2020/12/28 20:27 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

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13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

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日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

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コドモダマシ

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つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告