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参議院は選挙でなく抽選にしちゃえばいいんじゃない?

 ナポリ3区の有権者のみなさま、ごきげんいかがでしょうか。新党アルデンテ代表のパオロ・マッツァリーノが地元に帰って参りました。10年前から新党です。今後もずっと新党です。
 きっといまごろ日本では、参議院選挙で大盛り上がりだと思いますが……え、全然盛り上がってないの?
 ほら、だからずっと前から私はご提案してるのですよ。『日本列島プチ改造論』に書いたように、どうせみんな選挙に関心がないのなら、参議院はいっそのこと裁判員制度と同様に国民から抽選で議員を選んでしまえというアイデアです。
 県ごとの人口に応じて定数を決めて、県民から抽選で選べばいいので簡単です。
 裁判員制度だって導入前には、日本では絶対うまくいくはずがないと悲観的な予言が多かったことをおぼえてますか? けど、やってみたら、なんだかんだ続いてるじゃないですか。参議院もやればできますよ。
 以前著書でご提案した際には、報酬は日本国民の平均年収と同じにするのがいいと申しました。それには運良く当選した人が嫉まれないための配慮があったのですが、辞退者を出させないためには、報酬は現行のままのほうがいいかもしれません。
 年収およそ2000万円の仕事を6年間できるんですよ。最近名前が変わった文書通信費も支給するなら、実質的な年収は3200万円ちょっと。こんなおいしい条件の仕事を棒に振りますかね? 親の介護があるなど辞退の理由があったとしても、これだけの報酬があればヘルパーを雇うなどの方法で解決可能でしょう。

 この方法のメリットはたくさんあります。一番のメリットはもちろん、選挙費用がかからないこと。個人も国も自治体も無駄金使う必要がなくなります。この方式だと再選はないので、次の選挙に向けて地元の有権者の冠婚葬祭でこっそりカネをばらまいたりする必要もありません。
 議員の多様性も実現できます。おそらくこれを実施すれば女性議員が増えて、男女半々くらいになるんじゃないですか。いわゆるLGBTQみたいな人が選ばれる可能性もあります。
 そして、政治のしがらみからの解放。すべて個人として選ばれるわけですから、政党による党議拘束がないのもメリットです。ある案件は自民に賛成し、べつの案件では共産に賛成するといった、自由な立場で議決に参加できます。
 参議院は要らないんじゃないの、といわれる理由は、衆議院と似てるからです。同じものならふたつも要らないだろうと思われて当然です。しかも両院とも与党が過半数を占めるケースも多いのだから、なおさら意味がない。
 政党政治による衆議院と、個人による参議院、と両院の性格をはっきりとわけることで、参議院の存在意義が高まるのです。

 そんな抽選なんて制度を導入して、ヘンなヤツ、ヤバいヤツが議員になったらどうするんだ、とご心配なあなた。お言葉ですが、これまで選挙で選ばれた議員はみんな立派な人でしたかね? 議員になってからとんでもないことをやらかして、あいつ、あんなクソ人間だったのか、と投票したのを悔やんだ経験はありませんか。
 選挙のときには候補者はみんないい顔しか見せないし、きれいごとしか言いません。私は差別主義者で守銭奴です! 弱者を食い物にして私腹を肥やします! 自分さえ良ければいいのです! なんて演説してる正直候補者はいません。みんなウソにダマされて投票するんです。
 選挙で選んでも抽選で選んでも、議会にクソ人間が混入する確率はたいして変わらないと思いますよ。

 どうしても心配なら選挙の代わりに、裁判官の国民審査みたいな投票を3年ごとに実施するのはどうですか。あいつだけは議員をやめさせたいという人にバツをつけて、それが一定の割合を上回れば罷免されると。
 それこそ、どこぞの知事のリコール請求みたいに、気に食わない議員をやめさせようって陰謀みたいな運動が起きるんじゃないか? だいじょうぶ。そんな陰謀は成功しません。
 その企みをこっそりやるのは不可能です。成功させるには大規模な宣伝活動が必要です。となれば当然、その議員を支持する人たちも、やめさせるなという逆の運動を起こします。結果的に綱引きになるので、一方的に辞めさせるのは難しいでしょう。
 それに、リコール請求は署名だけだから気軽に何万人も応じてくれますが、審査投票は投票所に行ってもらわねばならないのだからたぶんそんな気軽には応じてもらえません。選挙にも行かない人は、罷免審査の投票にわざわざ足を運びませんよ。
 仮に罷免が成立したとしても、欠員はまた抽選で選ばれるのだから、自分らに都合のいい人が選ばれる保証はありません。いま、知事とかのリコール請求がされるのは、成立したら出直し選挙になって、自分らにとって都合のいい候補を当選させられるという目論見があるからです。

 とまあ、こんな感じで政治に関しても、こうしたらどうか、ああしたらどうかと、いろいろな思考実験をしてみるのも一興です。とくに大学生など若い人に考えてもらえば、もっと奇抜なアイデアが出そうな気がします。
 突飛な考えをすぐに切り捨てるのは、オトナの悪いクセですよ。あらゆる選択肢を排除しない、ってのが最近の永田町の流行語じゃないですか。
[ 2022/06/27 20:05 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告