こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。上の画像はおふざけで作ったバナーなので、いくらクリックしてもなにも反応しません。年に一度くらい、ウィキペディアに似たようなバナーが表示されることがありますが、偶然だと思います。
今回、私のお願いといいますのは、新刊の発売が決定しましたので、買っていただけたらうれしいなぁ、という、つつましいお願いでございます。
今月、11月下旬に、単行本と文庫本がほぼ同時に発売されることになりました。
まずは単行本のおしらせから。こちらのタイトルは『怒る!日本文化論――よその子供とよその大人の叱りかた』。技術評論社より、税込み1554円で11月22日発売予定となっております。
今作では、怒る、叱るというテーマを軸に、理論と実践の両面から考察し、日本人の教育や道徳やコミュニケーション文化について、あれこれあぶり出してみました。
おっと、早とちりしないでくださいよ。社会の矛盾やマナー違反の人間を怒るといった、そんじょそこらに山ほど積んであるありきたりなコラム本とは全然趣旨がちがいますからね。
「むかしは近所のおじさんやおばさんが、よそのこどものことも叱ってくれたんだ。社会全体で子育てをしていたんだ」みたいな話は年寄りの思い出話の定番です。そして、こうした過去を美化する思い出話はたいてい、世の中の道徳心はむかしより低下し、人心は荒廃した。戦後の自由な教育がまちがっていたのだ、という結論に結びつきがちです。
でも、それって本当なんでしょうか。むかしの人は本当によその子も叱っていたのでしょうか。戦前の日本人の道徳心は、本当にいまより優れていたのでしょうか?
いつものように近現代の史料からそのあたりを検証してみると、年寄りの思い出話とはかなり異なる、戦前日本庶民の真の姿が浮かび上がってきました。
電車内のマナーひとつ取ってみても、そう。戦前から電車内で化粧をする女は普通にいました。車内では小学生が走り回って騒ぎ、年寄りに席を譲らない若者もたくさんいたのです。なおかつ、そういったマナー違反を目撃して不快な思いをしながらも、乗り合わせた乗客はみな、トラブルを恐れ、なにもいい出せず見て見ぬふりをしてたのです。よその子を叱るおじさんなんて、むかしからほとんどいませんでした。それどころか、こどもを叱れない親や教師だって、珍しくはなかったのです。
つまり、道徳という面では、戦前と現在の日本人のレベルは、ほとんど変わりありません。むしろいまのほうがほんのちょっと良くなってる可能性すらあります。少なくとも、戦後の道徳教育が日本人の道徳心を低下させたというのはいいがかりです。
ウソだと思うなら、私の新刊『怒る!日本文化論』をお読みください。これまでの本と同様に、私は根拠となる史料などをすべて明らかにした上でフェアに論じております。
と、いうあたりが理論編。今作がこれまでの本とちがうのは、理論だけでなく実践編があることです。物書きは、しばしばイジワルな読者から難癖をつけられます。エラそうな理屈をこねるなら、おまえがやってみろよ! はい、やりましたよ。私はここ数年、近所のこどもや、電車や図書館でマナー違反をしている他人に対して腹が立ったら、なるべくガマンせず、面と向かって注意してきました。
知らない人に注意したりして、殴られる危険はないのか? 他人の注意なんて聞き入れてくれるものなのか? そして、どういうふうに注意したらより効果的なのか? そうしたみなさんの疑問にお答えしましょう。身をもって実践から学んだ、よそのオトナやよそのこどもを叱るコツと心構えを本書では公開しています。本文でも説明している重要なコツをひとつ、お教えしましょう。怒る叱る注意するのでなく、交渉すると考えること。本当に大切なのは、道徳心でなく、コミュニケーション能力なのです。
というわけで『怒る!日本文化論』は実用書としてもじゅうぶんお役に立つはずです。怒りたいのに怒れずに悩んでいる人たちに、ぜひ読んでいただければと。
そしてもう一冊の新刊は、『日本列島プチ改造論』の文庫版です。こちらは角川文庫から、税込み620円で11月22日発売予定とネットの新刊発売情報にありますが……てことは『怒る!日本文化論』とまったく同じ日に発売になるようですね。私もいま知りました。
『日本列島プチ改造論』は、以前に単行本で出ていたものを文庫化したもので、内容はほとんど同じです。変化といえば、角川の広報誌に以前書いたショートコラムをおまけにつけたのと、表紙イラストがマンガ家の大石まさるさんの絵になったくらいです。
なお、『プチ改造論』の文庫本ですが、日頃ブログを愛読してくださるみなさんに感謝の意を込めまして、抽選で10名にプレゼントする方向で調整してもらってます。日本の出版社の慣例として、本を出しますと、著者は見本として10冊もらえることになってるのですが、今回その私のぶんをプレゼント用に回すよう、お願いしてあります。
ゴーサインが出れば、たぶん角川さんのサイトから応募していただくカタチになると思います。応募者の個人情報が私に伝わることはありませんのでご安心を。正式に決まりましたら、またお知らせします。