こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先日久しぶりに秋葉原から上野まで散歩しました。アメ横は平日の昼間でも外国人観光客でごった返していて、ようやく日常が戻りつつあるのだなあと実感しました。
さて、春ドラマ序盤の評価なんですが……
私が選ぶベストは『グレースの履歴』。NHKBSのドラマだし、序盤でなくもう来週最終回なんで、他の地上波ドラマと同列に評価するのはどうかって声もあるでしょうけど、飛び抜けた秀作なので、これをはずすわけにはいきません。
主演が滝藤賢一さんと尾野真千子さんと聞いただけで、はい、観ます! ってなるし、実際、お二人の演技を堪能できました。セリフがないシーンでも、滝藤さんの微妙な表情の演技で感情の機微が伝わってきます。
それこそが、映像芸術のおもしろさでしょ。近年のドラマやアニメではキャラの気持ちを全部セリフで説明する傾向が強まったと批判されてます。私もその批判に同感です。読解力のない視聴者への配慮だとしたら、余計なお世話です。すぐにわからなくたっていいんですよ。何か月、何年後かに思い出して、ああ、あれはああいう意味だったのか、と理解できることもあるわけで、それもまた映像作品を鑑賞する楽しみのうち。
旅行先のフランスで事故死した妻が残した愛車ホンダS800。そのカーナビの履歴には、フランスに出発する前に日本各地を一人で訪ねた形跡が残されていた。夫はその車を走らせ、妻の目的が何だったのかを知るための旅に出る――。
というちょっと謎めいたストーリー(ミステリーではないです)に、美しい風景と人との出逢い。毎回、極上のロードムービーを観ているようです。各話のゲスト俳優もいい役者さんばかり出るんで、なんて贅沢なドラマなんでしょう。毎週の放送が待ち遠しかったです。
地上波ドラマで観てるのはいまのところ4本。
『ラストマン』は、脚本が黒岩さんで、このキャストで、つまらないわけがなかろう。ある意味約束されたおもしろさだけに、TBSは冒険しなさすぎなんじゃないの? 中盤・終盤でどこまで視聴者を裏切ってくれるか、期待してます。
『日曜の夜ぐらいは……』も脚本が手練れの岡田さんなのでこれも間違いのないところ。初回は清野菜名さんが演じるサチの屈折した心情の描きかたにため息が出ました。ツラい人生に慣れすぎて何も希望を抱かなくなった彼女は、笑うとあとで余計にツラくなるから笑わずに生きているのだと。まったく接点のなかった3人の女性が出逢うことで、彼女たちの人生がどう変わっていくのか、この先の展開が楽しみです。
以上2本はたぶん最後まで観るけど、あと2本は途中で脱落するかもしれません。
『風間公親 教場0』は、設定と雰囲気は決して嫌いではないのですが、クルマを走らせて地図上に犯人の名前を書くとか、銅像を溶接するとか、現実にそんなことするか? 小学生向けのミステリークイズかよ、といいたくなるトリックが多いのが難点。
評価に迷うのが『波よ聞いてくれ』。化粧も性格もきつめでマシンガントークのヒロインを小芝風花さんが熱演してるのは評価しますが、話自体がちょっと特殊で説明が難しい。日常に潜むちょっと笑えるホラー、ミステリーっぽいエピソードをラジオドラマのように語っていく、とでもいえばいいのかな? 無難なものよりは、これくらいトガってるほうが望ましいけど、肝心のエピソードがちょっと薄味なんですよね。そこをヒロインのキャラの魅力で補えるかどうか。
[ 2023/05/01 20:46 ]
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