こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。朝は6時ごろに起きて、テレビをつけてNHKのニュースを見ながら朝食の準備をするのが日課です。日曜だけはその時間、時代劇の再放送なんです。先週まで『雲霧仁左衛門3』だったのですが、今週から『雲霧仁左衛門5』が始まりました。なんで? と思って調べてみたら、『雲霧仁左衛門4』のキャストに永山絢斗の名が……。
さて、春ドラマの最終評価と夏ドラマ序盤評です。
まず春ドラマですが、最終的な評価は序盤と変わりまして、『風間公親 教場0』と『ラストマン』が同率1位、『日曜の夜ぐらいは……』と『波よ聞いてくれ』を同率3位にしました。
『風間公親 教場0』は人間ドラマとしての評価です。刑事たちを、それぞれに個人的な問題を抱えている、欠点のある弱い人間として描き、彼らにその問題と向き合い克服するよう仕向けていく風間は優れた教師です。
風間と刑事たちの緊張感あふれるやりとりは見応えがあったのですが、各話の事件とトリックにいまいちなものが多いのが欠点。だから脚本の君塚さんも毎回の事件はあっさり片付けて、刑事たちの人間ドラマの部分をふくらましてました。
トリックが現実的でないという批判には、すべて論理的に可能なトリックだからミステリとしてはフェアであるとの反論もありました。それに再反論しておきます。
ミステリは基本的に活字、小説で味わうべきエンタメだと私は思ってます。活字を読んで脳内に作るイメージはあいまいなので、多少無理があるトリックでも許せてしまいます。でも映像化するとはっきりくっきりすべてが見えてしまうので、現実的でないトリックは、一気にウソ臭さが目立ってしまうのです。
だからミステリを映像化する際は、論理的可能性だけでなく実現可能性も考慮しなければなりません。映像作品ではフェアであるかだけでなく、リアルであることが求められるのです。
ちなみに過去の『このミステリがすごい』を確認したところ、単発ドラマの原作だった『教場』は年間2位の高評価でしたが、連ドラの原作『教場0』『教場X』は20位以下のランク外でした。
『ラストマン』は最初から最後まで安定のおもしろさだったので文句はないけど、斬新さや意外性には欠けてました。てか、途中から捜査官の目が見えないって設定、どうでもよくなっちゃってない?
『日曜の夜ぐらいは……』は思ってたのと全然違いました。初回の印象ではキツい展開を予想してたのですが、宝くじが当たって3人でカフェを始める平和なお話でした。岡田惠和さんとクドカンさんのドラマには、本当に悪いヤツは出てこなくて、悪いヤツもじつはけっこういいヤツでした、みたいなパターンが多いんですけど、今回もまさにそれ。
序盤の印象が最後まで変わらなかったのが『波よ聞いてくれ』。エピソードが弱くて途中で飽きちゃう回もあったけど、これくらい個性的でトガってるドラマもあってほしい。大きなストーリーが進まないうちに終了したので、えっ、これで終わりなの? って感じでした。小芝さんがせっかく強烈なキャラを熱演してたのだから、続編作らないともったいないですよ。
始まったばかりの夏ドラマを期待度の高い順に並べてみます。
『最高の教師』
『VIVANT』
『警部補ダイマジン』
『初恋、ざらり』
『シッコウ!!』
『彼女たちの犯罪』
『最高の教師』は生半可な感動学園ドラマにケンカを売る気まんまんです。おそらく今後も、二転三転する仕掛けを用意してありそうで、期待大。
国際的陰謀・国家的謀略の大風呂敷を広げている点で共通する『VIVANT』と『警部補ダイマジン』ですが、かたや金に糸目をつけない超大作、かたや低予算映画のノリ。この手の話は、謀略の全体像があきらかにされた時点で、おおーと感心するか、なんじゃそりゃとずっこけるかのどちらかですが、さあ、どちらに転ぶでしょうか。
『初恋、ざらり』は主演の二人の演技がうますぎるんで観ちゃいますけど、けっこう重い話ですよ、これ。
差し押さえをする執行官という職業の実態に驚いたのが『シッコウ!!』。給料はなくて完全歩合制という、バウンティハンターみたいな職業が日本にもあるんですね。たぶん原作では執行官の織田さんだけが主役なんでしょ。そこに犬好きの女性をムリヤリつけ足してダブル主演にしてるんですが、すべての差し押さえ案件で犬を登場させるのはムリがあるような。
『彼女たちの犯罪』は、浮気された女と浮気した女、そして女性刑事の3人が組んで、なんらかの犯罪を実行したという話らしい……ってところで初回は終わり。続きを観ないと評価はできませんね。
それと、以前BSで放送された『しずかちゃんとパパ』がようやく7月25日からNHKの地上波で放送されます。私が昨年観たドラマのなかでベストに選んだ作品なので、お見逃しなく。
[ 2023/07/23 17:59 ]
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