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テレビ番組評:ストライキのドキュメンタリーと旧統一教会の手口解説

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。去年まではわりと池袋に近いところに10年近く住んでたので、池袋にはちょいちょい行ってました。東京の他の大きな街にはない穴場的な雰囲気が気にいってたんです。でも西武・東武デパートで買い物をしたことはほぼなかったです。
 その池袋西武で先月――いや、もう先々月になりますか、デパートとしては61年ぶりのストライキが行われました。
 西武の池袋店は黒字経営だそうですが、グループ全体ではかなり苦しいようで、経営側がデパートという業態に見切りをつけて売却したのです。買収した会社がデパートの3フロアをヨドバシカメラにする計画に反対する西武の従業員がストに踏み切ったのでした。
 西武グループがこじゃれた広告やCMを流しまくって消費文化を牽引していた絶頂期を知ってる世代の私としては、感慨深いものがあります。

 デパートに限らず、いまや日本ではストライキ自体が非常に珍しいものになりました。70年代には日本全国で年間5000件以上のストがあったのに、2022年には30件くらいしかなかったとのこと。
 私は50代ですけど、たしかにストライキって、こどもの頃にニュースで見た記憶しかないんですよね。日本で社会人になった90年代以降に、なんらかのストライキの影響を受けたおぼえがありません。
 先日もハリウッドでは脚本家や俳優組合がストをやってたように、欧米では空港や学校などがストで閉鎖されることがしばしば起こります。
 何かに抗議する権利を行使するのを当然だと考える欧米人と対照的に、現代の日本人は事なかれ主義と泣き寝入り文化が染みついてしまってるので、ストは世間を騒がせる迷惑行為、もしくは左翼の陰謀みたいな受け止めかたしかできないんです。

 そういう珍しさもあってか、テレビ各局がニュースで西武のストを報じてましたけど、外側から見えるストライキという現象をなぞってるだけなので、なにも伝わってくるものがありませんでした。たぶんみなさんもそうだったのでは。
 そんななか、9月15日にテレビ東京で放送された『ガイアの夜明け』。西武の組合に密着取材して、ストをやるかどうかの話しあいの段階から、投票を経て決行に至るまでの様子を撮影した貴重な記録です。
 ニュースだと外側から見た現象でしかなかったのが、人間中心のドキュメンタリー的な撮りかたをすると、中にいる人たちがどんな思いでストを決行するに至ったのかなど、生身の人間のさまざまな想いが伝わってきます。
 61年ぶりってことは、ストをやる側にも過去にストを経験した人が誰もいないわけですよ。労組の委員長も私とだいたい同い年くらい。西武一筋に勤めてきた人なので当然ストの経験なんかありません。みんなが手探りでストライキの実現まで漕ぎつけていく様子がわかり、いまの時代にストライキをやるとこんな感じになるのかと、とても興味深く観ました。
 こういうのはテレビという大きな組織でないとできない取材です。ユーチューバーが個人でストライキの模様を取材させてくれと申し入れてもムリでしょ。テレビっていう看板があるからできることもあるのだから、テレビはそのアドバンテージを最大限活用して価値のある番組を作っていくべきです。

 9月23日放送のNHK『危険なささやき』は、旧統一教会が新たな信者を勧誘・洗脳していく手口をドラマ仕立てで再現し、それがどんな心理テクニックにもとづいているのかを専門家が解説するという、なかなか攻めた番組でした。
 放送前に旧統一協会側から放送中止を求める抗議があったそうですが、某教団などとボカすことなく、旧統一教会と実名を出して放送を断行したNHKの姿勢をほめたいと思います。
 てか、放送するなという抗議はおかしいよね。だって旧統一教会は、自分たちの勧誘や宗教行為などに問題はないとかねがね主張してきたわけで、もし本当に自分らが正しいと思ってるのなら、むしろ手口を放送してもらえば自分たちの正しさの宣伝になると考えるはずです。放送するなと抗議したってことは、自分たちが悪いことをしてたと認めたも同然です。
 自分たちの正しさを一方的に主張して、批判を許さない旧統一教会の基本姿勢はやっぱり何も変わってないようです。変わりますとかいってたけど、変わるつもりはないのでしょう。もう、一刻も早く旧統一教会に解散命令を出すべきです。

 さて、傑作が目白押しだった夏ドラマですが、スタートが遅かった『何曜日に生まれたの』がまだ放送中なので、完結してから評価します。
[ 2023/10/02 11:53 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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